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長年燻っている想いからその時々の萌えまで。
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獅←雪が前提の志摩雪を書きたくてもわもわしてます。
獅雪に身体の関係ないどころか告白もしてなくて始まってもいないんだけど、獅郎が好きで獅郎が死んだ後も誰にも心を開かないと決めている雪男を、志摩がゆっくり溶かしてあげる話を妄想して…あまりに長くなりそうだったので、書きたかった部分だけ徹夜明けのテンションで書いた自己満足品。
前半は捏造オリキャラ視線なので注意です。
後半がいつもの志摩雪のターンらぶなふたり。
後半の志摩雪だけだとちょっと話がわかり難いので前半も読んで頂けると嬉しいのですが、志摩雪だけでいいって人のために後半頭にあらすじもつけてます。
ずずいっと下の方にスクロールしてくだされ~★
 




*もう一度*



上から下まで真っ黒い服を着ているのに、佇むその人はまるで白い花のようだった。
ひらり、ひらりと降り注ぐ淡い花弁よりも、ずっとずっと綺麗で、儚げで。
その瞳は確かに私と同じ、失った悲しみを秘めていた。
なのに、ねえ。
……どうして、笑っていられるの?








「お兄ちゃんも、誰か死んだの?」
声を掛けたのは、その人がとてもとても綺麗だったから。
それ以外の理由なんてなかった。
めそめそと悲しむ黒い服の大人たちと一緒に居るのが嫌で、抜け出した私がその人をみつけたのは、私の背丈と変わらない大きな石がたくさん並ぶ―――お墓、の前。
風がとっても強くて、はらはらと降り注ぐ花びらが足元を染めている。まるで絨毯みたい。それはその人の靴の上にもひらりひらりと重なって、蟠る花びらが真っ黒い靴を白く染めていく。
このまま降り積もって、嫌なものも全部…ぜんぶ覆い隠してくれたらいいのに。
そんなことをぼんやりと思いながら、降り続く花弁を追いかけて視線を上げると、ぱちぱちり、大きな瞳が瞬いていた。
よく晴れたお空の色みたいな、深い海の色みたいな、不思議ないろ。
まるでおとぎ話みたいに綺麗ないろ。
「うん。ここにね、とうさんが眠っているんだ」
その瞳は『寂しい』って言っている。『愛しい』って言ってる。ああ、私とおんなじだ。
「咲美もね、お父さんが死んじゃったの」
「そう」
「死ぬって…咲美には良くわからないけど、遠いところに行ってしまったから、もう会えないんだって」
「…そうだね」
「お父さんどこに行っちゃったのかな、どうして会えないのかな」
「……」
会いたいよ。そう漏らせば、もう一度、そうだね、と言って困ったようにその人は微笑む。
「お父さんが死んでから、お母さんはずっと泣いてる」
その人の肩越しに見た景色は、どこまでも続く鈍色。今にも泣き出しそうないろ。それでもぐずぐずと水分を限界まで溜め込んで、雲は重そうに浮いている。
「あの日から、呼んでも、お母さんが、咲美のこと見てくれなくて」
ああ、空が見たい、と思った。
こんなどんよりと重たい空じゃなくて、この人の瞳みたいな澄んだ空。
せめて、とその瞳を覗き込んだ。晴れた空のいろ。そらいろの虹彩の真ん中の赤がまるで太陽みたいに輝いている。
魅入られたように、ただその色を見ていた。見ていたかった。
瞬きも忘れていると、とん、と肩に乗せられた手のひら。
それは温かかった。じわりと、そこから温かさが広がっていく気がした。

いいんだよ、と言われた気がした。

「ふぇ、」
我慢していたものが突然決壊した。
私の空白の時間を埋め尽くすように、涙が溢れて止まらない。
「お母さんまでどこかに行っちゃう…」
泣いて泣いて私の呼びかけに返事もしないお母さんの前で、私まで泣いちゃいけないと思ってた。ただひたすらに耐えていた。
でも今は、一度許してしまった涙のコントロールなんて出来るはずもなくて、どんどん視界が滲んでいく。
不安が後から後から湧いて溢れて、うわあぁあ、と言葉にならないものばかりが口から零れていった。
「大丈夫」
滲む視界の先から、優しい眼差しが降り注いでいる。
「生きている人には、いくらだって愛してるって伝えることができるから」
ほら。ふわり、と、滲んだ視界でもその人が綻ぶように笑ったのが分かった。
遠くから、お母さんの呼んでいる声がする。
「おかあさ…っん」
私は溜まらず声の方へ駆け出した。
咲ちゃん、ごめん、一人にしてごめんね、と泣きながら謝る母親の温かい腕に包まれて、わんわん泣いた。
私にはまだわからない。こんなに悲しいのに、つらいって心臓が言ってるのに、多分あの人も同じだったのに、どうしてあんなふうに綺麗に笑えるのか。
でも、今は少しだけ、胸の奥があたたかさを取り戻している。











「お父さん、また来ちゃった」

父が死んで、十回目の春が来た。
あの時まだ六歳だった私も、今はもう高校生だ。
あれから母は父の分までわたしを愛してくれた。
大好きな人を亡くしてつらかったろうに、ごめんね、と強く抱きしめてくれた母が大好きだ。
高校生にもなって彼氏の一人も作らずに、母親と一緒に居る方が楽しいなんて、とんだマザコンに育ったものだと思う。
だってわたしたちは、あの涙も傷も、二人で乗り越えたのだ。
いや、だけどずっと、二人だけではなかった。
おじいちゃんやおばあちゃん、友達、先生。たくさんの人に支えられて、助けられて。
それからきっと、母は父との思い出を支えにして。
―――私はたぶん、あの人、を支えにして。
正直、父親の記憶は曖昧だった。
母がよく話して聞かせてくれるから、知った気になっているけれど、自分で覚えている記憶なんて数えるほどだ。
なのに頻繁にここに来てしまうのは、
―――もう一度だけでいい、あの人に会えないかなって期待しているから。
暗いものに絡め取られそうだった私を救ってくれた人。
私には愛してくれる人が居るって、愛されたいと思ってもいいんだって教えてくれた人。
今日みたいに晴れた空を見ると思い出す、あおいひとみ。あの不思議ないろを、今でもはっきりと覚えている。
だけど十年通い詰めて、今のところその姿を見れずにいる。
時々、あれはひらひらと舞い落ちる花が見せた幻だったのかもしれないと思う。
だってあまりにも…人ではないみたいに美しかったから。
ねえ、

「お母さんも私も、ちゃんと笑えるようになったよ」


……貴方も、この空の下で笑っていますか?




*****

アバウトなあらずじ⇒獅郎のお墓参りにきて、悪魔に取り憑かれそうな子供を偶然助けた後の雪男のはなしが始まるですよ。





「ゆき」
優しい響きが耳に心地いい。
少し離れたところから見守っていた彼が近づいてくる。
おつかれさま。慈しむように伸びてきた手が僕の右手を取って、その拍子に、指先に僅か残っていた聖水が爪を滑って、ぽたりと地面に染みを作った。
「うん、取り憑かれる前でよかったよ」
まだ精神が未発達の子供のうちは、悪魔に取り憑かれやすい。
子供が抱える闇に惹かれて集まるような魍魎は力も弱くて、指先に取ったほんの数滴の聖水だけでも祓うのは容易い。けれど、大人と違って純粋な願いを抱える子供は一度憑かれると、祓っても祓ってもまた簡単に取り憑かれてしまう。
迷い込んで、道標を無くした心に巣食う闇は、大人の自分勝手な欲と違って『落ちる』ことは滅多にないけれど。
「優しい子ぉやったな」
「…うん」
―――いや、優しいというよりも、臆病、だったんだよ。
心の中だけでそう告げて、苦い笑いが沸き起こる。
泣くことが出来ずに僕を見上げてきたあの子が、なんとなく一年前の自分と重なった。…神父さんを亡くして、つらいのに悲しいのに、泣けずに居たあの頃の僕と。
愛されることに臆病で、誰かに頼ることなんて出来なくて、戻らない永遠(思い出)に縋っていたあの頃。誰にも愛されなくていい思い出だけでいい、そして僕も誰も愛さないのだ、と、頑なに思っていた。
だけどそれでは駄目なんだ。駄目だって、今は知っている。
「あの子なら大丈夫」
散々遠回りした自分と違って、簡単に愛情を受け入れたこども。
ついと見やった、とおくで抱き合う親子に近づく魍魎はもう居ない。
「ちゃんと、愛してくれる人が居るから」
「雪ちゃんにとっての俺みたいに?」
「僕にとっての志摩くんみたいに」
遠まわしに『愛してる』と告げられて。嬉しくなって顔を上げると、思いの他真剣な眼差しとかちあう。
「俺にとっての雪みたいに?」
「…うん」
彼に握られたままだった右手の指を、そっとその指に絡めた。
「志摩くんにとっての僕みたいに」
僕の告げた遠まわしの『愛してる』に、嬉しそうに笑った彼が、ぎゅうと力強く握り返してくる。
へへ、と照れたように笑う彼の目尻が近い。
「ちょっと志摩くん」
ちゅ、と触れてきた唇が、右手の指を絡めたまま抱き寄せられた身体が、一度では離れてくれなくて。
「ええやん、花吹雪で見えへんて」
ざわり、風に舞う花びらは、二人を隠すほどの力はない。わかっているのに、触れ合う温度はいとも簡単に僕の心を溶かしていく。
柔らかく包んでくる腕が気持ちよくて、離れるなんて出来ない。
ああもう、僕ってこんなに意志薄弱だったかなあ、と思うけれど仕方ない。
好きな人から全身で愛してると告げられて、悪魔の囁きよりも甘やかなそれを嬉しく思わない人間なんてきっと居ない。
失う悲しみが怖くて二度と誰も愛さないと思った臆病な心は、もう愛されることを知ってしまった。
指先から伝わる熱に、この手に触れていなければ、温もりも痛みも知らずに居れたのだと思うけれど。

―――こんな弱い僕でも良いって、好きだって君が言ってくれたから。だからもう一度だけ。


君の肩越しにみつめた花舞う世界は、今日も光に溢れている。

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PH・青祓・幽白・炎ミラ・その他ジャンルいろいろ。
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