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長年燻っている想いからその時々の萌えまで。
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勝雪続き。
最後の方に出てくるエロ魔神がちょっと下品なこと言ってますのでご注意。
勝雪増やそうキャンペーン中(ただの自給自足)にてあと1回続きます。
すみません、あと1回、ほんとあと1回だけなんで続けさせてくださ…い…。
続きを数パターン考えているのでしぶでアンケート中ですよければご協力を!(明日まで設置してる予定)←アンケートは終了しました。
どう転んでもハピエンですが。
燐雪も志摩雪もいいけど、勝呂は雪男を真っ当に幸せにしてくれそうですよね!!


*合格祝い2*



アクセサリーとかは、どうかな。
そんなに高いものは無理だけど、ピアスでも、ネックレスでも、指輪でも…

そう言われて、勝呂は弾かれたように顔を上げた。
「別に、アクセサリーじゃなくても欲しい物が他にあれば…、って、勝呂くん?」
「え、いやっ」
雪男の提案を反芻して瞬きさえ忘れていたところに、どうかした?と愛して止まない澄んだ瞳がきょとりと覗いてくるものだから、並んで座っていたベンチで近すぎる距離に相手を見ることも出来ずにカチコチになって膝に置いていた手を顔の前で振って、何でもないのだと告げるので勝呂は精一杯だった。
「次のお休みに買いに行こうよ」
勝呂くんはこんなに素敵なものをくれたのに。何も浮かばなくてごめんね。
大事そうに勝呂の贈ったマフラーを撫でて、申し訳なさげに形のいい眉を下げて告げてくるその様に心がぎくりと痛む。
ただいつも黒ばかり身に纏っている雪男が、その瞳のような鮮やかな色に包まれた様はさぞ美しいだろうと思っただけだなんて口が裂けても言えない。
それよりも、多忙な中で珍しく休日を丸一日空けてくれた、それだけでもう充分だと言いたくて、けれど勝呂が言えずにいると、無情にも予鈴が昼休みの終わりを告げた。








「…こんなんやあかん」

勝呂竜士は悩んでいた。
普段であれば悩みなどというものからは程遠く、悩むなんて時間の無駄、同じ後悔するなら即実行、を素でいく彼は、けれど恋愛事となると話は違っていた。
いや、普通の恋愛であれば冷静であれたのかもしれない。
そう。これはただの恋愛ではない、一世一代の大恋愛だ(と勝呂は思っている)。
何せ相手は掴まえることができたのが奇跡と言っても過言ではない、あの奥村雪男なのだ。
想い続けてもうすぐ三年。
奇跡的に実った恋は、叶うと思っていなかった分、半年経っても実は実感があまりない。
それもそのはず。思い返せば、キスどころか手を握ったこともなくて。
したくないわけではないのだ。むしろしたい。ぶっちゃけしようと思っている。
それなのに、大好きなあの綺麗な顔を見ているだけで胸がいっぱいになって、あっという間に過ぎる時間にいつもタイミングを逃してしまう。
いや、自分は決して面食いではない。外見だけが好きなわけではないのだ本当に。
確かに初めは美人だなと思った。
明らかな愛想笑いとわかる笑顔も、その美しさを損なうことはなかった。
けれど相手は史上最年少で祓魔師になった天才。その穏やかさの裏にはどんなものがあるのだろうと興味を持ったのが切欠だった。
特進科で同じクラスの雪男を、気付けば目線が追っていた。
最初は憧れに毛が生えたくらいの感情だったのだと思う。
それが次第に彼の人となりを知っていって。
兄を想う深い情や、その兄のために七歳から祓魔を学んだという直向さ健気さ。自身の力を驕ることない勤勉さと、自分はまだまだだと言う謙虚さ。
春風駘蕩、才色兼備。世の褒め言葉は全て彼のためにある(と勝呂は思っている)。
いや、ありとあらゆる誉め言葉を尽くしても足りない(と勝呂は思って以下略)。
…と話が逸れたが。
つまり勝呂にとって雪男は理想が服を着て歩いているような存在であった。
その綺麗な顔を見ているだけで、その声が自分の名前を紡ぐだけで、深い碧の瞳に見つめられるだけでドキドキが止まらなくて、同じ空間に居るだけで幸せだった。
しかしこのままで良いはずがない。
見ているばかりで満足していては、片想いの時と一緒だ。
まして、念願叶って半年前に実った恋は、四月からは雪男は東京に残り、勝呂は京都へ帰ることになるので遠距離恋愛になる。
その前に、二人の絆を確固としたものにしたいと、勝呂は悩んでいた。
今だって雪男の人気にひやひやしているのに、自分が傍に居ない間に別の人間に言い寄られて、物理的距離がそのまま心の距離に、なんて目も当てられない。
けれど、そんなことを考えていて、今日のように隣に居るのに上の空だなんてそれでは本末転倒だ。
そういえば週末の約束をしたことを思い出す。
お互いの多忙さゆえにデートすら碌にしたことが無い自分たち。丸一日を過ごすのは初めてのことだ。
本当に、今時小学生だって自分たちよりも進んでいると思う。
「はあ」
考えれば考えるほどにドツボに嵌まっていき、どんよりと曇り空の見えそうな重たい空気を纏い、勝呂は組んだ両腕に額を押し当てた。
「なんや、珍しく沈んではりますね」
「坊、辛気くさいよって」
「志摩さん!」
「ぐふっ! 子猫さん痛いっ」
「痛くしとんのや!」
「はあ」
子猫丸が志摩の横腹をどつき、ぎゃいぎゃいと言い合いをしているのにも、ため息以外出てこない。
炬燵机(もう春だから純粋に机として使っている)に全員で顔をつき合わせていることもすっかり失念していた勝呂は、目の前の光景にまたはあと一つ息を吐いた。
「…お前は悩みがなさそうでええな」
髪色に負けないくらいの能天気な脳内が今日ほど羨ましいと思ったことはない。
大好きだと言って憚らない女子たちと何の抵抗もなく気軽にしゃべる志摩は、自分のように好きすぎて前後不覚になるなどといったことも無いのだろうか。
「おおきに~」
返ってきた返事に、いや褒めとるわけやないで、と反論する気すら失せて口を噤む。
「ははあ。坊、若先生のことで悩んでますのやろ」
察しの良い志摩がにやにやと覗き込んでくるのにも、自分もこのくらい軟派であったならばこんなに悩んでいないのにと思った(失礼)。
「…どないしたらええんやろな」
坊、志摩さんに相談しても…という子猫丸の声が耳に入ったが、別に相談しているわけではない。独り言だ。ただ答えが見えずに口から出てしまった言葉に、けれどやはり志摩が過剰反応する。
「寮暮らしやとこういうんは色々困りますからね。そろそろお泊りデート、とか考えてはるんやろ」
このむっつりさんvと人差し指で小突いてくるのが心底気色悪いが、それよりも雪男と自分の現状に勝呂は顔を顰めた。
「いや、…まだ手ぇすら握っとらん」
「「はあ?!」」
志摩はまだしも、子猫丸までもが奇声を上げる。
「坊、それは…」
「いくらなんでも、今日日小学生でももおちょい進んどりますよ」
「う、」
言いよどむ子猫丸の沈黙を遮って、志摩からは自身でも思っていたことをどきっぱりと指摘されて、がっくりと項垂れた。勝呂とて自分の不甲斐なさはわかっている。わかってはいるのだ。
けれど、今まで兄の事や生まれた時からの魔障など大変な思いをしてきた分、優しく大切にしてやりたい。どこか諦めたような寂しげな微笑ではなく、最近よく見るようになった綻ぶような笑みが定着するように。嫌がることは何一つしたくなかった。
それに向こうが行動を起こさないということは、もしかしてこういったことは望んでいないのではないかと思ってしまって…。
大事にしたい気持ちが強すぎて、自分の欲望など二の次、三の次。気づけばズルズルと友達の延長のような付き合いから抜け出す切っ掛けもタイミングも掴めず今に至る。
しかし大切にしたい気持ちと自分の欲望との間で揺れる心はそろそろ限界だ。
いや、でも、やっぱり。
ぐるぐると思考の闇に捕らわれてしまった勝呂に、坊考えすぎですて、と今度は志摩が溜め息を落とす。
「大事にしてはる気持ちもわかりますけど、もう少し押してもええ思いますよー」
自分の欲望に傾きかけていた天秤に一匙、無責任な志摩の言葉が乗せられる。
「…そうやろか」
いいのだろうか。
抱きしめてこの腕の中に閉じ込めても、雪男は変わらず笑ってくれるだろうか。

「そうですて! 奥ゆかしい若先生のことですから、自分からは言い出せんと待っとるんですよ!」

「!!!」
がんっと殴られたような衝撃が勝呂を襲った。

…待たせてたんか!!

志摩の言葉に自分では気付かなかった可能性に、勝呂は愕然とする。
その可能性は考えていなかったが、まさか、ひょっとすると。
勝呂の脳内ではすでに、鼻先が触れるほどに近付いてキスを待つ雪男が瞳を潤ませて、待ってた、勝呂くん…と囁いている。
ほんのり頬を紅色に染めて恥ずかしそうに伏せられた睫毛が震えている(勝呂の妄想上の)雪男は、焦らさないでと首に腕を回してくる。
唇が誘うように薄く開き覗いた赤い舌(妄想)に勝呂の脳は焼ききれた。


ガッタン。


「わっ」
「っぶな!」
炬燵机の上板がずれるほどの力を込めて立ち上がった勝呂に、志摩と子猫丸は慌てて卓上のマグカップを死守する。
中身が零れなかったことに安堵する志摩がホッとしたのもつかの間に、黒い影が覆いかぶさってきた。
「…坊?」
「ありがとおな志摩」
「お、おん」
ゆらりと立ち上がった勝呂のその表情は、元々の目つきの悪さも手伝っていっそ凶悪だ。威圧感さえ感じる空気を纏って、そのまま扉へと向かう姿に声が掛けられない。

「俺に足りんかったのは強引さかも知れん」

ばたん。
扉が閉まる直前に落とされた不穏な言葉に、志摩は、あー…、と天を仰いだ。
「若先生、大丈夫やろか…」
以前…というかつい昨日、風呂場でうっかり見てしまった、休戦状態であっても羨ましい大きさの勝呂の分身を思い出し、若先生壊れんとええけど、と零した志摩をきょとりと子猫丸が見上げた。
 

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