久しぶりのレイブレなのに暗い…。
さらに暗い続きを書いていたのですが、レイムさんが泣き出したのでやめました。
しあわせなレイブレが読みたいっ!
*言い訳*
しゅる、しゅ、と布擦れの音しかしない部屋。
必要以上にきつく巻かれていく包帯に窮屈な足よりも、沈黙が耳に痛い。
目が見えなくなって、情報源としての価値を増した『声音』は無く、彼の手からのみ読み取れるその感情に私は戸惑う。
だってそれは、今この状況で彼が発するには似つかわしくない感情だ。
しかし、勘違いかもしれないと思った矢先、その口端が、ふ、とついに笑いを落として確信する。
「…レイムさん。何でそんなに嬉しそうなんですカ」
そう、嬉しそうなのだ。
いつでも、怪我をすればお小言の裏にもありありと『心配で堪らない』と駄々もれだった彼が。
「ああ…バレていたか」
楽しそうな声音が、俄には信じがたい現実を肯定する。
くすりと笑う気配のする先に、けれど見えない彼の表情。
一体…。
「嬉しくてたまらないな」
きゅ、と結ばれた包帯の上、足首からくるぶしへと手が滑る。
ひょこりと僅か引き摺る足を見咎められ、手当てをするからと引き込まれまたお小言を言われるのかと思いきや、笑っている、彼。
何だかわからないが良からぬ予感に身を引けば、立ち上がろうとした途端ぎっちりと固定された足首にバランスを取れずにソファに逆戻りした。
「~~~!」
「くっ」
倒れこんだのを支える腕の先から笑いを堪える音がして、かっと頭に血が上った。
「レイムさん、…やりましたね」
固定された足首に、痛めて庇っていた時よりも数段歩き難い。というか、これでは歩けない。
くつくつと笑う彼は確信犯だ。
私の仕事が終わるまでここで大人しくしていろ、と頭を撫でられる。
いつの間に持ってきたのか、いや、どうやら治療道具と共に既に持ってきていたのだろう書類を触れ合うほど近くで処理し始めるのに、包帯を解いて逃げることも出来ない。
ぶすくれてソファの上で膝を抱えていると、ひとつ、柔らかく落ちてきた唇。
軽く触れるだけで離れて、けれどすぐ目の前の気配は離れていかない。
「…こんなこと、許してませんけど」
「ああ。でもお前は今は私から逃げられないだろう」
言うが早いか再度近づく気配に既に役に立たない瞳を閉じた。
…嫌いだ。
こんな時ばかり強引な彼も。
逃げられないことを言い訳に大人しくキスを受ける自分も…―――。
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