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長年燻っている想いからその時々の萌えまで。
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だらっと続いている志摩雪同棲捏造話。
11月設定なのであぷするタイミングを逃してたのですが、志摩雪不足を叫んでいる方がいらしたので。
高校3年設定「春までは、まだ。」⇒大学1年設定「コンビニおでん」⇒大学3年設定「これからもずっと、君と」⇒社会人設定「君といつまで」となんとなく続いて、今回も社会人編。
捏造甚だしいです。
既に熟年夫婦。
何でも許せる方に。
このシリーズは途中の高校3年の話(書き途中…)を除いてこれで終わり。
 



*二人出会った日が少しずつ思い出に変わっても*



もう住んで二年以上になるきっかり家賃12万の部屋は、大学時代に二人で過ごした部屋よりも家賃の分いくらか広い。
都心で希望の間取り条件に合っていて更に家賃12万以下をクリアするにはさすがに駅近というわけにはいかず、今回もまた坂の上の物件だ。
坂の上と言っても所詮は舗装されたアスファルト。登山のような苦労があるわけでなし、駅からも苦になる距離というわけでもないから不満はない。
むしろ窓から見えるその景色を雪男は気に入っていた。
窓からはキラキラと冬支度した街並みが見える。
遠くに見える観覧車のライトが変わったのは何日前だったか。クリスマスが近づいて一段と明るさを増した街は、きっと寒さにも負けず人で溢れているのだろう。
世間がクリスマスムードになるということはつまり十二月がやってくるということで、雪男はもうすぐ自分は一つ年を取るのだと思った。
少しずつ、けれど確実に変わっていく日常。
どれだけ変わりたくないと願っても時の流れを止めることは出来ず、でもだからこそ今が大切だと、愛しいとそう思えるようになった自分に雪男は小さく笑った。
それはきっと他でもない彼の影響で、変わっていく自分すらも悪くないと思えるから不思議だ。
ふと。久しぶりに、引き出しに仕舞ってあった指輪を取り出す。
シンプルな銀色の指輪は仕舞ったときと同じ輝きを称えていたが、何となく一緒に仕舞っていたクロスで軽く磨く。光沢を増した指輪を左手に収めれば、ひやりとした温度はすぐ指に馴染んだ。
しばらく嵌めていなかったのは、見られて困るような状況だったからでも、ましてや志摩と喧嘩したからでもない。
それは本当に大した理由ではないのだが、久方ぶりに嵌めた指輪にここ数ヶ月の忙しさを思い返して雪男は珍しく溜め息を吐いた。

痩せた指に指輪が緩い。

指の太さなどそうそう変わらないだろうと思っていたが、ほんの2kg痩せたくらいで銀の輪はぐるぐると回ってしまう。
デザインものではないから回っても支障はないが、どうにも落としてしまいそうなのだ。
さてどうするかとそれを眺めていると、背後に感じた気配が圧し掛かった。
「…ちょっと前から思っとったけど、雪ちゃん、痩せた?」
ふわ、と背中が温かくなって、振り返るといつもの微笑みがそこにあった。
「少しね」
「ふーん。って指輪ブカブカやないの!」
左手を取られて、指だけではなく細くなった手首に志摩が顔を顰めた。
春にサイズを直したはずの時計も緩くなっていて、ベルトの間に指を入れた志摩が問いかける。
「少し?」
「少し」
嘘やろ手首が細くなるってどんだけやねん、という突っ込みは無視していると、言葉とは裏腹にほっとした溜め息が志摩から漏れる。
「そんで最近つけてくれなかったんや」
「まあ、そういうこと」
言葉にしないまでもここしばらく指輪をしていないことを疑問に思っていたらしい。
時々左手に感じていた視線に、やっぱりと思っていれば、指に納まったままの指輪を志摩の指がくるくると回した。
関節ですらも悠々と回るようになってしまったそれを、ひょいと外される。
「サイズ直す?」
「ううん、いい」
「…なんで?」
明らかに不服そうな志摩に噴出しそうになる。
別につけることが嫌なわけじゃないよ、と告げれば、じゃあ何でと雄弁に訴えてくる視線。
「これは、このままがいいんだ」

…この指輪は志摩くんから貰った約束だから。

そんなこと恥ずかしくて言葉には出来はしないが。
何かを感じ取ったらしい志摩が、そおか、と銀の輪を雪男の指に戻した。
恭しく左手の薬指に戻された指輪に、それを受け取った時を思い出す。
あの時の自分はまだまだ未来が怖くて。
いつか必ず別れがくるのだと、心のどこかで思っていた。
変わらないものなんて何一つなくて。
例えばそれは年を重ねていく外見とか、生活環境とか。

…愛のカタチ、とか。

昨日はぴったりはまっていたと思ったピースが今日は合わなくなることもあって。
ぴったりきたと思ってもまたすぐ変わってしまう。
でも少しずつズレたりほつれたりするそれを、二人で直して、重ねて。
そうして一緒に居られることが嬉しいから。
「なー、今日は鍋でええ?」
たくさん食べれるし、と早速すきやき鍋を出している志摩に、すでに決定事項じゃないかと思いつつも冷蔵庫の中身を思い出してみる。
薄切り肉は冷凍してあったけれど豆腐は絹ごししかなかったなどと考えて、本を見なくても、レシピ通りでなくても当たり前のように料理の出来るようになった自分を思う。
二人で囲む食卓が嬉しくて、自然と覚えていった料理。
高校を卒業したばかりの頃は、料理なんて必要最低限できればいいと思っていたのに。
変わっていく自分、変わっていく二人の在りかた。
それでも。
二人出会った日が少しずつ遠い思い出になっても。
振り返ればほら。

志摩くん(いつも通りの幸せ)がそこに在るから。

ただ一つだけ、この約束だけ変わらなければいいと願った。

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プロフィール
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kao
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非公開
職業:
秘書ときどき旅人
自己紹介:
PH・青祓・幽白・炎ミラ・その他ジャンルいろいろ。
長年燻っている想いからその時々の、萌えの欠片を集めました。
更新は自由気まま。リンクは同人サイトに限りフリーです。貼るも剥がすもご自由に★
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