長年燻っている想いからその時々の萌えまで。
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しぶにはお先に上げてました、パラレルの続きです。
勝呂と志摩しか出てこないけど、志摩雪と勝燐っぽい表現があります注意。勝燐は友情にするか腐向けにするか悩み中。。 それにしても話が全然進んでない・・・っ 兄さんとかは次に・・・! 次には・・・!
6.願い事、ひとつ
「おまえ、なんやその頭と顔」 呼び出された先で朝の挨拶もすっ飛ばして言われた言葉に、志摩はへらりと自身の頭を掻く。 「俺の顔が男前なんはいつものことですけど、この髪は先生に梳いてもらいましてん」 「…ニタニタ締まりない気持ち悪い顔しとる思たら、また『若先生』絡みか」 「気持ち悪いて! まあ締まりないんは認めます」 こお優しく繊細な指がな、と力説する志摩の言葉を右から左に受け流し、勝呂はこら長くなりそうやと嘆息しそれでも止めることはしなかった。うるさい黙れと言うのは簡単なことだが、目の前の幼馴染が世間話を持ちかけるのは聞いて欲しい気持ち半分、そして残りの半分は即位してから公務続きで多忙な自分への思いやりということを知っている勝呂は、志摩の言葉に黙って椅子に深く座りなおす。 身振り手振りを加えて話す志摩の、今はさらさらと重力に逆らわない髪は雪男を連想させた。丁寧に扱われているのだろう雪男の髪は、いつ見ても絹糸のようなつややかさで風に揺られていた。対して、燐の髪はいつも跳ねていたことを思い出す。 初めて燐に雪男を紹介された時には、髪も瞳も同じ色なのにこうまで印象が違うものかと思った。 だらりとポケットに手を入れて歩く燐とは対照的に、いつもしゃんと背筋を伸ばしている雪男。 明るく元気で直情的な燐と、いつでも穏やかな笑みを浮かべて勝呂には何を考えているのかまったくわからなかった雪男。 同じ色の髪すら質が違うのではないかと思う程の差で、瞳は印象の差からか勝呂には周囲の言うように二人が同じ色をしているとは思えなかった。 数ヶ月ぶりに顔を合わせた雪男は相変わらずで、燐とは本当に双子かと思うほどに似ていない。 似ていないのに。似てないからこそ、勝呂にとって雪男は燐を連想させる存在だった。忙しさを理由に会わないようにしてしまうほどに。 …思い出さんようにしたとしても、事実はなあんも変わらんのにな。 正十字学園で過ごした二年に満たない日々の、そのさらに半分を共に過ごした友人を思い起こす。 ほんの十五年しか生きていない勝呂の中で、その時間は今も鮮やかに心に残っている。 京の国次期座主として幼い頃から勉学に励んできた勝呂には元々様々な学問の学士が教師として付いていて、名門である正十字にも主席で入学を果たした。両親の勧めで正十字を受けたものの、勉強なんてどこででも出来る、と始めは乗り気でなかった勝呂だったが、自国を出て様々な人種や文化と触れ合うことは刺激になった。今では、志半ばで帰国したことはとても残念で、そんな機会が来ることはないと解っていても時々戻りたいとさえ思ってしまう。全寮制の正十字は規律も厳しかったが、同年代の中で学ぶものや吸収すべきものはたくさんあった。 その中でも、勝呂に鮮烈な蒼を焼き付けた存在―――奥村燐、は、勝呂にとって、生まれて初めての『友達』であった。 志摩も子猫丸も友人ではあるが、小さい頃から勝呂の目付け役として傍に居る二人と違って、お互いの素性も知らないところから始めて、喧嘩して、理解しあった親友だった。 今は会うことは叶わなくても、その気持ちは変わっていない。 …けど、向こうには怨まれとるやろな。 きっと今頃、大事な弟と引き離されて怒り狂っているだろう燐を思い、勝呂は苦笑した。 感情を隠すことのない燐のその様は、容易に想像することができる。 学園でも周囲を憚らずに弟を構い倒していた燐は、ガサツな所作と違って優しい心根の持ち主だ。 『俺は、優しいことのためにこの力を使いたい』 きっかけは偶然のものだったが、お前にならと燐から打ち明けられた秘密ですらも……。 燐の抱える秘密はどう考えても理不尽なものであるのに、本人にはけろりと仕方ないと言ってのけられて、怒りを通り越して無力感を感じたあの日。 どうにもできない悔しさに言葉もない勝呂にそれでも、ありがとな、と笑った燐の顔が忘れられない。 世の中には自分なんかではどうにも出来ないことが沢山あるのだと悟らされた日だった。 この秘密を知っている人間があとどれだけ居るのかは知らないが、勝呂と燐の二人が秘密を共有しているという事実は弟の雪男すらも知らないだろう。どれほどの信頼でもって真実を告げてくれたのかと思うたびに、勝呂よりも少し早く学園を去った友との約束を守りたいと強く願った。 今は無理でもいつかきっと。そう誓った約束。 けれどその約束の成就は『いつかきっと』では駄目なのだ。出来ることならば今すぐに。とにかく早く事を成さねば、自分たちは二度と会うことも叶わなくなるのだろう。 その過程が強引なのは自覚している。けれど。 …どんだけ怨まれても、無くすよりはええ。 悩んで立ち止まるよりも次の一手を。自分たちには時間がない。 次はどうする? どうすれば… 「…ん、坊! ぼおぉん!!!」 自身の考えに耽っていた勝呂の耳元に、大音量が響いた。 「おわぁっ!」 あまりに近くで叫ばれた声に思わず勝呂が耳を押さえて身を引けば、さほど面積のない椅子からガタリと落ちた。 「いっ、たあ! おま、なにするんや!」 「坊が上の空なんがあきませんのや」 まったく、と呆れ顔で手を差し出す志摩につかまって身を起こせば、ぼんやりしはって疲れとるんやないですか、と心配されるものだからそれ以上の文句も言えずに勝呂は口を噤んだ。なんだかんだで気を遣うこの幼馴染は、今回のことで物言いたげな視線を送ってくることはあるものの、座主となった今でも変わらず砕けた態で接してくれる数少ない人間だ。 …せや。こいつのためにも。 志摩が『若先生』こと奥村雪男に夢中なのは、どれだけ冗談のように見せかけていても長年を過ごした勝呂は知っている。 けれど、あの約束が実行できなければ。勝呂が燐に会えなくなるだけでなく志摩も雪男とは会うことが叶わなくなるだろう。 自分のためにも、志摩のためにも。 …実現してみせる。 そのために、好機とばかりに座主を継いだのだ。 一つゆっくりと瞬いて、勝呂は宙を睨んだ。 「あ、そや」 定期報告―――と言っても変わり映えない日々で伝えることも何もなかったが―――が済んだ後。 「今日坊に会う言うたら、若先生がやっぱり外出はダメかて聞いてはりましたよ」 志摩が駄目元とばかりに口にした台詞に帰ってきた返事は意外なものだった。 「ああ。そのことやけどな、今日呼んだんは…」 PR |
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プロフィール
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kao
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非公開
職業:
秘書ときどき旅人
自己紹介:
PH・青祓・幽白・炎ミラ・その他ジャンルいろいろ。
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