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長年燻っている想いからその時々の萌えまで。
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こいするしまくん。
倖田のflower(古っ)を聞いて『恋の花を咲かせて欲しい~♪』って歌いながら書いた、両想いになるまでを書こうと思って絶賛挫折中のお品★
続きちゃんと考えてあるんですけど、ここ数日しぶに志摩雪いっぱい上がっててわーいおなかいっぱい大満足~(*´▽`*)♪ってなってる今。
読む方に夢中なものですからすぐに続き書ける気しなくてしぶからは下げまして。とりあえず季節ものなのでここに上げときます。
一応、続き書くよっていう自分戒め用。



  しあわせの条件



「この恋に出逢うことがどれほどの奇跡なんか考えたら、黙って見過ごすことなんてできひんやん!」


そんな軽口を言っていた頃の自分が懐かしい。
いいと思ったら躊躇なんかせずに押して押して、当たって砕けてもまたそれを楽しんで、なんて。そんなお気軽な『恋愛』が出来た自分はどこへ行ってしまったんだろう。

眠りにつく前に、
いつもより少し良く出来たテストを褒められたことを思い出して幸せな気持ちになるのも。
上手に喋れなかったことを悔やんで泣きたい気持ちになるのも。
愛しさが苦しくて、こんなに切ない気持ちになるのは彼が初めてだ。
好きだなんて軽々しく言えない。
当たって砕けたりなんてしてしまったら、自分がどうなってしまうかわからない…―――。





*****





もう二月も終わりに差し掛かったというのに、やっと少し寒さも落ち着いたと思った矢先にぶり返した気温の低さに指先が痛いほどの夕方。冷暖房のない塾はそれでもなぜかいつも適温であることを思い出し、いまさらながら一体どうなっているのかと志摩は首を傾げた。
まあ考えたとこでわからんけどな、とあっさり疑問を手放し、手袋を持ってこなかったため赤く冷たくなっている両手をポケットに突っ込む。じわと温まってきた指先の血行が戻ってくると、今度は唯一外気に触れている顔が冷たくてマフラーに鼻先までを埋めた。
吐き出す度に白く染まっていた息を仕舞い込めばちらり、目の前に落ちた別の白。重い曇り空にいつ泣き出すかと思っていた空から、気がつけば雪が降り出していた。
そら寒いわけやわあ。
今は一般生徒の下校時刻ぎりぎりの時刻で志摩のほかに人影がないことに何の疑問も抱いてはいなかったが、なるほど、これは外に居るような気温ではない。
それなのに放課後の静かな通用口に一人。
もしかしたら、どこかに、
…まだ帰らんで若先生がおるかも。
なんて淡い期待にこんな寒空の下で待っているなんてどうかしている。
薬学の授業の終わり。「また明日」なんて塾生全員に投げられた挨拶に、また明日も会えるんや、とそれだけで幸せな気持ちになれる自分は相当だ。
自分でも呆れるくらいに求めているのに、けれど志摩は、さり気なく見送った後ろ姿を追いかけることも出来ずに居た。

ただ遠くから見ていれば、近づかなければ、確かに失くさなくても済む。けど…

ふいに風に踊る雪が志摩の頬を撫でる。
ポケットから出した右手を差し出せば、それは一瞬で手のひらの上で熱に溶ける。
たった一粒受け止めた雪は大して皮膚を濡らすこともなく、一瞬だけ感じた冷たさもすぐに消えてしまった。
志摩はその手をぎゅうと握りこむ。

視界の先に、見慣れた制服姿が映りこんだから。

「ぁ……」
下駄箱から靴を取り出し外履きに履き変える姿に、ここまできて志摩は声を掛けるのを躊躇った。
雪男は志摩に気付いていない。それならこのまま、『いつも通り』に黙って見送る方がいいのではないか、と。
そう。本当は。

…ここで会うたんはただの偶然なんかやないのに。

塾の後、時間があれば雪男が図書室に行っているのを志摩はを知っている。閉館ぎりぎりまで静かな窓際で本とノートを広げる横顔と伸びた背筋が綺麗で、雑誌コーナーからカモフラージュ用に持ち出した週刊誌はいつだって1枚もページが進まなかった。
こんなに、見ているのに。
どれだけ見つめたところでそれはただ一方的な想いでしかなくて。
いつも鉢会わないように彼より少しだけ早く校舎を出て、
けれど離れ難くて出てくる彼を見送って、
だけど、

…見とるだけやったら想いの欠片かて伝わらへん。

日々膨れ上がる想いはもう秘めているには大きくなりすぎていた。
昨日よりほんの少しでも近づきたい。もっと近くで彼の笑顔を見たい。今は彼が素で笑いかけるのは兄の燐くらいだけれど…。
図々しくも、志摩は自分の隣で笑っている雪男の姿を想像してみる。
それは想像しただけでも息が詰まるくらいに幸福で。もしかしたら、ほんの少しの勇気を出せば実現するかも知れない未来にぎゅっと胸が押しつぶされる。
今も揺れている気持ちに、けれど、成りたいと思う気持ちが志摩の背を押すから、閉じかけた口を開いて大きく息を吸った。

「若先生!」

上げた声につと上げられた視線が重なる。
碧の瞳が瞬いた後に笑みの形に細められるのを見ながら、志摩はついに覚悟を決めた。
走り出す鼓動を止められそうにない。もう後戻りはできない。
相手は一年近く『教師と生徒』をしていても距離の縮まらなかった強敵だ。勝算は限りなくゼロの方に近いだろうと思う。
それでも自分が少し変わればきっと、世界も少し変わるだろうから。


どうせ悔やむんなら、全部を賭けてからや!
 

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プロフィール
HN:
kao
性別:
非公開
職業:
秘書ときどき旅人
自己紹介:
PH・青祓・幽白・炎ミラ・その他ジャンルいろいろ。
長年燻っている想いからその時々の、萌えの欠片を集めました。
更新は自由気まま。リンクは同人サイトに限りフリーです。貼るも剥がすもご自由に★
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