長年燻っている想いからその時々の萌えまで。
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初書き黄泉→蔵馬です。
続きからどうぞ。 【再会】 1000年もの間、彼を忘れた日など1日もなかった。 長く続いた甘美な苦痛。
そう。黄泉は、妖狐蔵馬に恋をしていた。
初めはその姿に。
ともに過ごすうちに次第に内面に触れ、容赦のない冷酷さにすら惹かれた。
しかしその想いは、成就どころか告げることも叶わぬままに、黄泉の望まぬ別れに引き裂かれた。
それが他の誰でもない蔵馬によってもたらされたものだということも、今では知っている。
知ってなお、その気持ちには変わりがなかった。
冷酷さを含めて、美しさも醜さも、蔵馬を形創るもの全てを愛していた。
いや、愛して、いる。もう二度と会うことが叶わないのだとしても。
ただただ、自分は永遠にあの美しい幻影を想い続けるのだと思っていた。
魔界に、一陣の風が吹くまでは。
感じた妖気に、心が跳ねた。
胸が躍らないわけがない。
これは間違いなく、蔵馬の妖気だ。
初めは、あまりに渇望しすぎて狂ってしまったのかとも思った。
しかし間違いない。
衰えを知らぬ、満ちた妖気。
咄嗟に全てを放り出して、妖気を追う。だが、それはほんの一瞬で、元来た穴を通って行ってしまった。
黄泉の妖力では、縮小しつつあるあの穴を通ることはまかりならない。
わかっている。
けれど。
今すぐに追いかけたい気持ちを抑えることができない。
なんとかしてあの穴を抜けられないものだろうか、と頭をめぐらせるが、穴の大きさもそうだが、その先に感じる霊力がやっかいだった。
敵わないことはない、とも思うが、1000年の間に身に付けた知恵が、黄泉を止める。
「黄泉様!」
危険な思考を遮るのに丁度よく、飛び出した王を探して兵達が追いついた。
「黄泉様、どうなされたのです!」
「…いや」
「?」
答えつつも、王は視線を、感覚を動かさない。王のじっと見つめる方角を、不振に思った兵たちも見つめた。
「! あの穴は!」
「あんな巨大な穴、みたことがない!」
どよめく兵達に、逆にようやく黄泉に平静さが戻ってくる。
今出るのは得策ではない。わかっている。
それでも、未練のままに見えない目で穴を一瞥すると、振り切るように兵に告げた。
「人間界に遣いをだす。できるだけ違和感なく潜伏できる、追跡に長けた者を選んでくれないか」
叶わぬと思った再会に光が射したことに変わりはないのだ。
ただ想うだけだった1000年に比べれば、再会までは一瞬であるはずだった。
けれど。
部下からの報告に、黄泉は愕然とした。
彼は脆弱な人間の姿となっていた。
人間の女を母と呼び、その女のために命を投げ出したこともあるという。
本当に、蔵馬なのだろうか。
頭伝針で見た今の姿も美しかったが、妖狐の頃には遠く及ばない。
透き通るような声も、当時のような有無を言わさぬ強制力はない。
妖力だって、当時の1/10にも満たないじゃないか。
叶わぬと思った再会に、光が射した。しかし、その光も打ち砕かれてしまうのか。
再びまみえたとき、自分は何を思うのだろう。
彼の変わりように落胆するだろうか。
もう愛する妖狐はこの世に存在しないのだと、絶望するのだろうか。
生まれて初めて、黄泉は恐怖を感じた。
恐ろしくてたまらない。
執着するものが無くなった世界で、己はいったいどうなってしまうのか…。
捜し求めたものが、手を伸ばせば掴める距離にあるというのに、
手を伸ばした途端、それはまた、幻と成ってしまうのかも知れない。
まるでその予感を煽るかのように、魔界の強い瘴気を孕んだ風が、黄泉の髪をかき乱した。
再会の日。
しかしそれは杞憂であったことを黄泉は知る。
(2007/09/04UP)
おもっきし、続く!って感じですな… PR |
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非公開
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秘書ときどき旅人
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PH・青祓・幽白・炎ミラ・その他ジャンルいろいろ。
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