また、パラレルです…続き物です…
『この夜を止めて』 『蜂蜜の結婚』 『遠い街で』と同設定。
パラレルOKの方のみつづきからどうぞ。
今回はあんまりパラレル色強くないお話なんですが。
少なくとも
『蜂蜜の結婚』を読まないと「…?」なところがあると思われます。
すみません。
ギルブレとかシャロブレとか彷徨っていたこの話も、ようやくレイブレ部分に到達。
まだ続くとか言ったら怒りますか。。
『切なさはこの胸の中に』※パラレル注意
※ブレイクさんが人外です※
午前の診療が終わり、遅めの昼食を摂っていたところに訪れた彼。
シェリル様からだという大きなケーキの箱を携えて現れた彼は、私が紅茶を淹れる間ずっと、ぼんやりと窓の外の喧騒を眺めていた。
「ザークシーズ、お茶にしよう」
彼の好む、私には少しばかり香りの強すぎるローズティーに、溢れるほどに中身を詰めたシュガーポットを添える。
味覚のほぼない彼だが、甘味だけは僅かに感じるらしい。紅茶に飽和状態にまで砂糖を入れて飲む彼のためにと、普段料理にすら滅多に入れない砂糖を常備するようになったのは最近のことだ。
以前ならば、人の多いところ(街中)にあるこの診療所に彼が顔を出すなんてことはなかった。
それほどにあの屋敷には居辛いのかと、喉元まで出掛かって呑み込んだ。
シャロン様が嫁がれたことで、彼はシャロン様付きの上級使用人から、シェリー様預かりとなった。
シェリー様は彼を大層気に入ってらっしゃるし、荒れていた彼が笑みを取り戻せたのは、シェリー様のおおらかさと、彼女がシャロン様の世話をザークシーズに一任して下さったことが大きい。
シャロン様を、以前仕えていた屋敷のお嬢様と重ねていたのだろう。シャロン様の成長は、ザークシーズの生き甲斐と言っても過言ではなかった。
そんな、想いは異なるもお互いを大切にする二人が微笑ましく、いつか結ばれることを私は…
いや。
こんなのは綺麗事だ。
私はただ。彼が笑っていてくれるのならばと思っただけだ。
ささやかな手助けをしたこともあったが、二人の幸せを心から願えたわけではなかった。
公爵家の一人娘と使用人の恋など成就されるわけがないと。どこか確信していたからこそ。
いつか離れなければならない二人。そうしてついにやってきた別れのその先も、私ならば傍に居ることに何の支障もない。
私はただその時を待てばいいのだ、と。
―――けれど、
私では駄目なのかもしれない。
傍に居ると誓った。
まるで一方的な誓いではあったが、薬指に落とした口付けの意味に、彼は気付いただろうか。
切り分けたクリームのたっぷり乗ったケーキをお互いの前に置けば、すでに薔薇の香りよりも甘い匂いの際立つカップにまたひとつ、ふたつと彼が角砂糖を落とす。
湯気の先に消えた塊は、それ以上には紅茶と溶け合うことなくただ、沈んでいった。
溶け合えない、
混ざり合えない、
これ以上には。
限度を越えてしまった。
それは、
溢れて、
いつか零れて、
そうしてどこへいくのか。
普段は何も入れない紅茶に、私もひとつだけ白い塊を落とす。
それは熱にほろほろと形を崩し、一瞬で溶けてなくなった。
―――このくらいの量であればいいのだ。
ほどよく甘味のついた紅茶。
しかし慣れてはいないその甘さとともに、私は衝動を飲み下す。
先に飲み干された彼のカップの底には歪な塊。
ほら、と二杯目を注いでやれば、そこに残っていた塊は砕けて消えた。
砂糖=レイムさんの想い的な、ね。←説明追記しないといけないような話を書いてはいけませんw
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