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長年燻っている想いからその時々の萌えまで。
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最近子レイムさん、もしくは若レイムさんの妄想が止まらなくて困っているkaoです。
こんばんは。

パラレルOKのお声を頂いたので、調子に乗って、『この夜を止めて』と同設定のブレイク人外もの、過去話です。
今回はちゃんとレイブレ。(と言い張ってみる)
しかしタイトルに反してぜんぜん甘くない。
レイムさん頑張れ…!

↓パラレルOKの方のみ、続きからどうぞ。


『蜜蜂の結婚』
 

痛い、寒い。
抉られた左目から、身体中の傷から、止め処なく流れる赤。
貧血のせいか、目の前がチカチカしていた。
私はここで死ぬのかと、冷静に考える。
お嬢様は逃げ延びただろうか。
それならいい。
それならもう悔いはない。
最期に、生い茂る木々に隠れてしまって青い空が見れないのは残念だけれど。
この静かな森でひっそりと死んでいくのも悪くない。
血が流れすぎたのか、既に痛いという感覚はなかった。
ただ身体が重い。
ああ、もう指一本も動かせない。
唯一自由になる目線を動かすと、視界の端にこの状況には不釣合いの桃色が映った。
ガサリと葉を掻き分ける音。
「こっちです早く来てください!」
パタパタと軽い足音が近づいてくる。
「人が血だらけで倒れているんです!」
「危険です! お待ちください---…」
…子供…?
現れたのはまだほんの幼い子供。
「まだ生きています!」
少女はお嬢様と同じくらいの年頃で。
ふわりと私の頭の近くに座り込み、息を確かめた彼女が、もう一人の子供を呼ぶ。
「レイムさん、何とかしてあげられないでしょうか」
「…シャロン様」
難しい顔をしている、少女よりも少し年上の彼は、きっと私の命が幾許もないことを悟っている。
「レイムさんはお医者様になるのでしょう! 何でもいいの! 何とか、何か…っ」
「…私はまだ勉強中の身です。それに…出血が多すぎます…彼は、もう…」
「まだ…まだ、生きているのに!」
泣きそうに歪む顔。
こんな見ず知らずの人間に、心を砕く必要はないのに。
瞳を開けていることさえも出来ず瞼を閉じれば、今目の前に居るは ずの子供の会話も遠くに聞こえた。
「そうだわ、あれを使えばもしかしたら…」
「シャロン様?」
「レイムさん! 少しでも時間を稼いで!」
「シャロン様!」
言いながら離れていく声。
駆け出したらしい少女に、少年がおろおろと後を追うか迷う気配がした。
だが、少しの間沈黙した取り残された少年は、次いで何かを決意したように近づいてくる。
ふわりと頭を持ち上げられ、柔らかいものの上に置かれた。
「今、シャロン様が大人を連れてくるから。それまで頑張れ」
必死に私の傷口を押さえる小さな手。
もういいのに。
放っておいてくれればいい。
---もう、疲れた。
だからもう眠らせて。
沈む意識に身を任せようとした、その時。
荒い息と共に小さな駆け足が戻ってきた。
「シャロン様…それは?」
「レインズワース家に伝わる薬だと…以前お祖母さまが言っていたのです」
さあ飲んで。
唇にひやりとガラスの感覚がして、どろりとした液体を流し込まれる。
飲み込む力も既になく、口に溢れるに任せた液体。
嚥下することなどできないと思ったのに、もったりと粘着質な感触の液体は、まるで意思があるかのように私の喉の奥に入り込んできた。
「…っ!」
びくり、身体が硬直する。
液体の通った食道が燃えるように熱い。
「あ、あぁああああぁあっ」
意味を成さない言葉が口から漏れた。
既に感じなくなったと思った痛みが全身を襲う。
感じたことのない痛みだった。
眼球を抉られた時でさえ、ここまでの痛みは感じなかった。
全身の骨までもを粉砕されるような感覚。
頭からつま先まで、痛くない場所がない。
弱くなっていた息さえも上がっていく。
思わず縋った何かに爪を立てれば、頭の上で息を飲む音。
頭上で子供たちが何か訴えていたが、もう響く声の意味も拾えなかった。


そして。
次に片方だけ残った目を開けた時、
私の時間は止まっていた。

 

*****

 

「ザークシーズ!」

いつもよりも少し上等な衣装に身を包んだ青年が駆けてくる。
かくいう私も今日は正装をしており少々窮屈だ。
何よりも、短いためにぎゅっと強引に結んだ髪が引きつれて頭が痛い。
「レイムさん」
「時間だ。行くぞ」
「…エエ」
促されて並んで歩けば、いつの間にか私を追い越した彼の方が歩幅が広くて、少しだけ早足で後を追う。
足を踏み入れた教会の中は、今日の日に相応しく光で溢れていた。
用意された席につけば間もなく。
パイプオルガンの音と共に、花嫁が入場してきた。
父親に腕を引かれ、純白の衣装が光を反射してまばゆいばかりの彼女。
出合った時にはわずか8歳だった少女は、妹のように思ってきた彼女は、今日嫁いでいく。
幸せそうな微笑み、染まる頬。
それはとても喜ばしいことのはずなのに。
漠然と、


こうして色んなものに置いていかれるのだ、と思った。


あの日から13年。
私の身体は時を刻むことを止めてしまっていた。
死にかけていた私にシャロンお嬢様が飲ませたものは、代々レインズワース家に『吸血鬼の血液』と伝わってきたものだという。
万病に効くと伝えられるそれは、けれど決して使うなとの言い伝えとともに保管されてきたらしい。
ただの言い伝えだと思われていた液体により、生き延びた私。
少女は純粋に私が生きていたことを喜んでくれたが、大人たちは複雑な眼差しを向けていたのを今でも覚えている。

「古来より吸血鬼と伝わるモノは、人の血を飲むものではなく、エーテルで生きるもののこと。何の害もあるまい」

レイムとともに滞在していたバルマ公爵の助言のお陰で、酷い扱いを受けることはなかったが、それでも突然現れた私に注がれる奇異な視線は変わらなかった。
無理もない。
傷だらけで運び込まれたと思ったら、翌日には全ての傷が塞がっていたのだから。
抉られて無くなった左目以外は全てが再生しており、切り刻まれたはずなのに傷一つない身体に自分さえも戸惑った。
恐ろしい変化だった。
傷は一瞬で癒える。
普通の食事は受け付けない。
人の血を求めるような事はなかったが、食事は砂を噛むようだった。
そして。
こんな身体で、仕える家に戻れるものかと思い、ふと口に乗せた疑問。
「今、シンクレア家はどうなっているのでしょう」

「かの家は既に潰えています」

娘を守れと命じた主はおろか使用人たちも全て殺され、
私とほか数人で守っていたはずのお嬢様も、
私がその命を託したはずの男が、命乞いのために差し出したのだと…---。

絶望する私はふさぎ込み、大人気なくも自分を傷つけた。
しかしどんなに身体を傷つけようとも、それがすぐに癒えてしまうのに更に苛立ちが募る。
そんな荒んだ私の心を癒したのは、仕えていた屋敷のお嬢様と同じ年頃のシャロンであり、おおらかなシェリー様であり、小言の多いレイムだった。
そして今ではちゃんと、
笑えるようになったと思ったのに。
あの液体により変化した私の身体がいつ寿命を迎えるのかはわからない。
止まったこの時間は永遠かもしれないし、明日事切れるのかもしれない。
けれど、今はこうして見送るばかりの私。
幼かった少女は立派なレディになり嫁ぎ。
隣に立つ青年はいつの間にか私の年に追いつき、そして追い越していくだろう。
変わっていく周囲と、変わらない自分。
遠ざかる白い背中を見ていられなくて目を伏せた。
馬車に乗り新しい家へと向かう彼女が見えなくなっても、私はその場を動けない。
気付けばここにはもう私とレイムだけ。
強い風が、私の背を押すように吹いた。
「…行きましょうか」
何とか笑顔を作る。
歩き出そうとしたところで、ふいに左手を取られた。
咄嗟のことに驚いて彼を振り仰げば、強い眼差しが注がれる。
「大丈夫だ」
頬に添えられた指が目尻を撫ぜた。
「私は…。私が、命の限りずっと、お前の傍に居る」
そう言って薬指に落とされたキスに、ずきりと胸が痛む。
甘くどろりとした何かが胸に落ちるのに、

気付かない振りでその指を解いた。





原作と違って、生き延びた後に目的がないブレイクさんはちょっと弱々しいかもしれない、と思って書いたもの。
そんなブレイクさんを支えるのはレイムさんであればいい!

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PH・青祓・幽白・炎ミラ・その他ジャンルいろいろ。
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