長年燻っている想いからその時々の萌えまで。
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こっそり支部から再録。
燐→雪なのに雪男視点という分かり難いシロモノですみませ・・・ この兄弟はイチャコラしているのがすきなはずなのに、あれ? 言葉にできずに抱きしめる 兄さんの様子がおかしい。 どこが、と問われれば返答に困るけれど。 最初は勘違いかとも思った。でも、確かにおかしいのだ。その変化はささやかで、例えばほんの少し体調が悪いとか、天候が悪いせいだとか、そんなものなのかも。 気に留める程ではないのかもしれないその変化が、今日に限って妙に気になったのは。 二人きりになった時の沈黙が、いつもより重かったから。 …その視線が、いつもより鋭かったから。 「兄さん」 「あ?」 いつもなら心地いいはずの沈黙が重く感じられ、なんとなく声をかけると、覇気のない声が返ってくる。 やはり体調が悪いのかもしれない。 授業中に窓からちらりと見えた体育の授業では、いつも通りの兄さんだった。 昼も、いつも通りの食欲だった。 おかしいのは、二人きりになってから。 「兄さん、何かあった?」 もやもやとしたままで過ごすのも気分が悪いので、はっきりと聞いてみた。 「…どうして?」 「少し前から、なんだかおかしい」 「おかしいって、どこがだよ」 「どこが、って言われると困るけど…」 自分は兄のどこがおかしいと思ったのだろう。 ふと、視線を落として考える。 言葉ではいい表せない。 でも、確かに、いつもと違う。 その程度の些細なものだから、燐本人ですら気付いていないのか。 それとも、やっぱり僕の勘違いか。 「僕の勘違いなら…」 別にいいんだ、と続けようとして。 上げた視線の先の表情に息を呑んだ。 「…んで」 「兄さん?」 「なんで、そんなに感がいいかな」 ちょっと目を離した隙に、兄さんの顔に浮かんでいた影。 いつも強い光を灯している瞳が揺れている。 「兄さん…」 兄さんだって強いばかりじゃないことは知っている。 明るいばかりに見えても、これからのこと、自分のこと、どうするべきなのか探っている。 でも、いつでも問題にぶつかったって、結果前向きな兄さんが…こんな、不安に押しつぶされそうな表情をするなんて。 どう声を掛けるべきなのか…。 さっきの声色からして、気付かれたくなかったのだ、兄さんは。 きっと最大限の努力で、僕に気付かれないように振舞っていたのだ。 触れて欲しくなかったのだ。 自分に舌打ちしたくなった。 感ばかりよく、けれどこんな時どんな言葉をかけるべきなのかもわからない自分に。 「兄さん」 困惑した口から出るのは、ただ呼びかけだけ。 呼ぶと、さらに兄さんが表情を崩した。 まるで自分が痛いみたいに、胸が詰まった。 どうしたらいいのかわからなくて、ただ立ち尽くした。 身動きの取れない僕に、無言のままの兄さんが近づいてくる。 その手が伸ばされるのを。 ただ、黙って受け入れた。 「ちょっとだけ…このまま…」 一瞬、何が起こったのかわからなかった。 頬に掛かる兄さんの髪。 背中に回された腕が、震えている。 「雪男…ゆきお…」 耳元でも聞き取れるか取れないかの小さな声で、兄さんが僕の名前を繰り返す。 助けを呼ぶように。 祈るように。 その声が痛々しくて、だらりと下げていた腕をそっと兄さんの背中に回すと。 びくり、と過剰なまでの反応が返ってきた。 だから、 「…聞かない方がいいの?」 やはり触れない方がいいのかと思って問う。 「うん。ごめんな」 抱きしめてくる腕に、力が篭もった。 そのまま、どれだけ抱き合っていただろう。 空が夕暮れから夜に色を変えても、兄さんはただ僕の肩に顔を埋めたまま。 言葉もなく。 ただ抱き合う。 それは決して不快ではなく。 一定のリズムを刻む兄さんの鼓動を聞きながら、 少しでも、兄さんの心が穏やかになるように。 ただそれだけを願った。 PR |
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プロフィール
HN:
kao
性別:
非公開
職業:
秘書ときどき旅人
自己紹介:
PH・青祓・幽白・炎ミラ・その他ジャンルいろいろ。
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