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長年燻っている想いからその時々の萌えまで。
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低気圧のせいか、意識が落ちてました…
先日の落書き的レイブレ1本追加ー!



『あなたのことを、』



カリ、カリ
ペンを走らせる音だけが部屋に響く。
あの日の宣言通りに私の書類仕事を全て肩代わりしてくれている彼は、休む間もなく次々書類を捲っていく。
ペンを走らせながらも、パラ、パラリと断続的に紙を捲る音は、何か資料を見ているのだろうか。
淀みなく進む作業に、どれほどの書類が片付いたのだろうと視線を向けても、ぼやりとそこに机があるだろうシルエットしか見えなかった。
ふと記憶にある仕事中の彼を思い出してみる。
思えば彼はいつ訪れても仕事をしていた。
長身の彼の頭すら見えない量の書類に囲まれていることもザラで、悪戯に驚かせてその山を崩してしまった時は本気で怒られた。
他にも彼に怒られた回数は数知れず。
青筋を立てる彼から逃げ回り、書類仕事ばかりで持久力のない彼が荒い息を吐く頃捕まってやれば、怒りながらも、お前も手伝え終わったら紅茶を淹れてやるからと甘やかされるのだ。
ああそうだ。書類を手伝えないまでも、紅茶くらいは淹れてやれるかと思い至ったところで、
カシャン
聞き慣れた音がした。
視力があまりよろしくないのを眼鏡で補っている彼は、長時間のデスクワークにやはり目が疲れるらしく、時折それを休めるように眼鏡を外して眉間を押さえていた。きっと今もぎゅうと閉じた瞼の上を揉み解しているのだろう。
それは、鮮明に思い出せるのだけれど…。
「…レイムさん」
「なんだ」
「レイムさん」
「……」
「レイム、さん」
「…ザークシーズ?」
ただ繰り返した名前に、戸惑ったように返された私の名前。
呼ばれたそれに笑みを乗せれば、立ち上がる気配が布擦れの音と共に近付く。
「…ザクス」
私の意図を汲み取ったように、貴方が私を呼ぶ。
伸びてきた掌は確かに彼がそこに在るのだと伝えてくる。
「ザークシーズ」
その心地よい響きに、触れる掌に擦り寄るように目を閉じた。

 

あなたのことを少しずつ忘れていくようで声をせがんだ。
 

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プロフィール
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kao
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非公開
職業:
秘書ときどき旅人
自己紹介:
PH・青祓・幽白・炎ミラ・その他ジャンルいろいろ。
長年燻っている想いからその時々の、萌えの欠片を集めました。
更新は自由気まま。リンクは同人サイトに限りフリーです。貼るも剥がすもご自由に★
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