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長年燻っている想いからその時々の萌えまで。
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軽く蛇足が4話ほど浮かんでいるのですけれど…。
全部書き進めているけれど、二つは公開しないかもしれない。
とりあえず女々しい志摩の話。(笑)



【アイシカタ蛇足①:クリスマスの話】
※気持ちをクリスマスに戻してお読みください。



「「「「「「メリークリスマス!!!」」」」」」


パンッパンッ
飛び散るテープと紙ふぶき。
志摩の手にしていた100円均一で買った『ゴミが散らずに音だけ鳴る』という便利なクラッカーは一際豪快な音を立てたが、やっぱりクラッカーはテープが飛び出んとなあとぼんやり思った。
次いでポンッとシャンメリーの栓を抜けば、勢いよく天井にぶつかった栓が勝呂にぶつかりそうになって、気いつけえ!と睨まれる。
その形相に怯えたポーズでわあ坊、堪忍!と返すと、それだけでどっとその場が沸いた。
去年に続き開催の祓魔塾生のクリスマスパーティは、旧男子寮の食堂で行われたいた。
祓魔塾を辞めた朴、それから何だかんだと文句を言いつつ宝も参加していて、塾生が全員勢ぞろいだ。
持ち寄った菓子と燐の作った料理で埋め尽くされたテーブルを囲み、毎日のように会っているというのに会話は尽きない。
学校の同級生よりも気心の知れたメンバーに、全員が自然体で笑いあう。
当然の事だが酒も入っていないというのにパーティというだけでこうも盛り上がれる自分たちに、ここはこんなに平和なのになあと志摩は今この場に居ない恋人に思いを馳せた。
二学期の終業式にも参加せず任務に向かった雪男。
今回は長くなりそうだと言って、既に用意してくれていたらしいクリスマスプレゼントを渡されたあの日から既に五日。ポケットの中の鳴らない携帯を一撫でする。
雪男の任務中は志摩からは連絡を入れない。本当に困る時にはそもそも電源を落としているだろうが、この夏に上二級に昇進してランクの上がった彼の任務を邪魔するのは吝かではなかった。
何を約束したわけでもないが、志摩の気遣いの代わりにとでも言うように、任務に行く時と帰る時には雪男から連絡が入るようになっていた。
まだかまだかと待ち続けている帰還連絡は、出発前の彼の予想通りまだ当分先なのだろうか。
らしくもなく溜め息を吐きかけたところで、隣に座るしえみがそわそわと食堂の入り口を振り返るのが目に留まった。
「どうしたん? 杜山さん」
「うん。あのね、雪ちゃんも来れたらよかったのになあと思って」
諦めきれないようにちら、と入り口の方を見るしえみ。
ぽつりと落とされたその一言に、その場が雪男の話題になる。
「そういやまだ何も連絡ないんか?」
「年内に帰れるかわからない、つってたからなぁ」
ぱくりとから揚げを口に入れた燐が箸を銜えたまま唇を尖らせた。
「誕生日にも帰ってこれねーだろうって」
「大変やね、奥村先生。昇格しはってから任務だいぶ増えたみたいやし」
「学校でもあまり見かけないと思っていたけど、そんなに忙しいの?」
「上級祓魔師の資格も最年少記録更新しはったからなあ。期待されとんのやろ」
「それにしたって先生だってまだ高校生なのよ。ほんっと人遣い荒いわよね」
まったくだ!と頷き合う面々は、たぶん、いや確実に雪男を気に入っている。
誰に対しても透明な壁を作る節のある雪男だが、燐の出生がバレても受け入れた塾生たちに対してはガードが甘い。
その綻びから一番に取り入った志摩だったが、その後周囲までもが我先にと距離を詰めていったのは苦い思い出だ。
味方は多い方がいいとわかっていても、独り占めしたい気持ちもあって。
雪男が自分以外に笑顔を向ける度、素を覗かせる度、あれは俺のもん俺のもん、と内で唱える心の狭さは本人が居ないこんな時にまでちくちくと志摩の心臓を刺した。
あ。あかん。
思い出した笑顔に、急に寂しさが込み上げる。
そっとポケットから取り出した携帯は、何の知らせも齎していない。
携帯を片手に志摩はすいと席を立って出口へ向かった。
「おえ、どこ行くん?」
「坊、デリカシーのないこと聞かんといてぇ」
きゃっと手を頬に添えて言えば、はあ?と低い声とともにきつい眼差しが返ってくる。
「そんな思わせぶりな事言うて、ただの御手洗やろ」
さっさと行きいや、と手を振る子猫丸にはーいと間延びした返事を返し、志摩は廊下に出た。
ガラガラと引き戸を閉めれば、他に誰もいない寮の廊下は驚くほどに静かだ。
たった扉一枚向こうのことなのに、つい先ほどまで自分の居た空間をどこか遠くに感じる。
軽口を言い合う友達もやはり切なさを誤魔化してはくれなくて、ピ、と携帯の短縮ボタンを押して志摩は耳を澄ませた。

『志摩くん、…まだ寝てるの? 休日だからってもう昼だよ。また後で掛けるね』
『こんな遅くにごめんね、また改めます』
『雪男です。ごめん、今日仕事が入ってしまったんだ。約束は今度にして貰えないかな。また連絡します』

出先から掛けられたものが多いからだろうか、少しだけ余所行きの雪男の声。自動で次々と再生される留守録はほぼ保存件数いっぱいに入っている。
全て再生し終わって静かになった携帯を耳から離して、志摩は苦笑を浮かべた。

あー…、あかんわ。益々寂しなった。

せめて声だけでも、と再生した音声は、寂しさを募らせるばかりだった。
この景色のどっかに居るねんな、と窓から外を見るも任務先は知らされていないから、どの方角かはわからず街並を眺める。
そのまま見上げた空は雲もほとんどなくて、冬独特の空は薄い澄んだ青がどこまでも広がっていた。
ああ、雪男は。この空の下で戦っているのだ。
寄りかかった窓越しにも冷たい外気が肌を刺して、志摩はぎくりとした。
寂しさに振り向く時間すらも持たない雪男の背中を思い出したのだ。
「…あかん!!」
ぱしんと両手で頬を叩く。
彼は既に上級祓魔師で。自分はまだ候補生でしかないけれど。
でも、寄り添うと決めたからには、せめて心くらいは強く在らなくてはと思う。

「はよ帰ってきい」

笑顔で迎えるから。
楽しいことをたくさん準備して待っているから。










「あ、居た。志摩くーん、みんなで写真撮るよー」

ぼんやりとどれだけの時間を過ごしただろう。声の方を向けば、部屋から顔を覗かせた朴が手招きしていた。
「おん」
志摩が足早に部屋に戻ると、既に全員が装飾された壁側に並んでいて。
遅いと言う面々にへらりと笑って返し、志摩はそういえばと首を傾げた。
「カメラなんて誰が持ってきてますの?」
「これで撮る。最近の携帯にはちゃんとタイマー機能があるんやで」
「携帯で全員写せるの?」
得意げに携帯を持ち上げる勝呂から、出雲が取り上げてフレームを確認する。
「ほら、もっと寄って!」
さすがに携帯カメラの可視領域は狭かったらしく、全員がぎゅうと集まった。
一番端だった志摩は、横の子猫丸をふざけて押しながら、そっと飾ってあったマスコットを手に取る。
それは塾生全員を模して飾りつけ用にと勝呂が作ったマスコットの一つ。眼鏡と黒子が特徴的な、彼を模したものだ。
ちょこんと手前に置いたその後ろ姿に、

いつかきっと、自分が彼の背中を守るのだと誓った。
 

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プロフィール
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非公開
職業:
秘書ときどき旅人
自己紹介:
PH・青祓・幽白・炎ミラ・その他ジャンルいろいろ。
長年燻っている想いからその時々の、萌えの欠片を集めました。
更新は自由気まま。リンクは同人サイトに限りフリーです。貼るも剥がすもご自由に★
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