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長年燻っている想いからその時々の萌えまで。
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こっそり支部から再録。
過去捏造な志摩雪。
小さい頃の雪ちゃんは神父さんと兄さんに遊ばれ…いえ可愛がられていたと思うんだ。
小さい頃の雪ちゃんはそれはそれは可愛かったと思うんだ。
今も可愛いけど!


  恋が落ちてくる



恋に落ちる、ってよく言うけれど。
俺の場合は恋が落ちてきた。


ばきん、と頭上で枝が折れる穏やかでない音がしたかと思うと、次いでガサガサガサっと何かが落ちてくる音。
鳥が落ちてきたにしてはずいぶん盛大な音だ。
上に落ちてこられたら痛いし、と避けようとして、目に入ったそれにギクリとした。
空から降ってきたのは、白い塊。
目に飛び込んだのは、ふわふわ舞う白い布地と、そこから覗く肌色。
宙に舞うその布地がまるで羽根みたいで。
天使、が落ちてきたかと思った。
避けようと退いた身体を戻して、受け止める為に手を伸ばした。
ぽすん。
あれだけ盛大な音を立てて落ちてきた割に、軽い身体は子供の俺の腕にも難なく収まった。
落とさないように、ぎゅっと抱きしめると、それは腕の中でもぞりと動いた。
覗きこむと、潤んだ大きな瞳と目が合う。
どくん。心臓からいつもの倍くらいの血が流れた気がした。
白いワンピースに真っ黒い髪と青い瞳が映えている。顔に三つも黒子があったけど、愛くるしさは少しも損なわれていなかった。
無垢な瞳に、ああ、天使は実在したんや、と。バカな事を思ったのを今でもよく覚えている。


























「詐欺や…」

「初恋やったのに」

「俺の純情返してください」


今日も授業の終わった教室で、大して親しくも無い生徒がぐちぐちと聞きなれた言葉を連呼する。
僕にとっても彼にとっても初めての祓魔塾での授業であったあの日。
初対面だと思っていた志摩くんに、実は子供の頃に一度だけ会ったことがあるのだと聞かされた。
その時のことはちっとも全然これっぽっちも覚えていないのだが、志摩くんはぶーたれた顔で、憶えてないんですか?と凄んできた。
すみません、憶えていません。素直に謝っても志摩くんの機嫌は直らず、忘れられた腹いせなのか、暇をみつけては何くれと僕にかまってくるようになった。
しかも最悪なことに、初めて出会ったというその時、僕は白のワンピースを着ていて、志摩くんは今の今までずっと女の子だと思っていたらしい。
それもそのはず。
子供の頃病弱だった僕に、どこぞの「身体の弱い男の子を女装させると丈夫に育つ」という迷信を信じた神父さんに、物心付く前からまだ男とも女とも判断し難い小さい頃、僕はよく女物の服を着せられていた。
保育園に入るくらいにはもうそれがだいぶおかしい事だってわかっていたけれど、うきうきと着せ替えをする神父さんには逆らえなかった。
さすがに保育園に着ていく服は男の子用だったが、家に帰れば用意されたひらひらの服へ着替えてのファッションショー。
可愛い!似合う!なんて笑顔万面で神父さんだけでなく兄にまで抱きつかれて、おろおろとするばかりだったあの頃。
…どう考えても、あれはただ楽しんでいただけだと思う。
と、話がずれたが、志摩くんとはその頃一度会ったことがあるらしいのだ。
まったく身に憶えないんだけど。
というか忘れろそんな黒歴史、と言ってやりたいのだが、問題はもっと別にあった。
一目惚れで初恋、だったりするらしいのだ。
誰が誰に、と考えるのもおぞましいが、志摩くんが僕…じゃない、女装した僕、いや違うな、女装させられてた小さい頃の僕、に。
机に突っ伏して拗ねまくる彼が吐いた溜め息に、溜め息を吐きたいのはこっちだ、と心の中だけでこちる。
勘弁してくれ。
志摩くんは一目惚れとか初恋とか、そういう大事な思い出が汚された気がしてならないみたいだけど、僕だって女装時代なんて思い出したくも無い過去なんだから、お互い綺麗さっぱり無かったことにするのが一番だと思うのに、この男はぐちぐちと。


「でもまぁ、もう男でも女でもどっちええんですけど」


「え?」

自分の考えに浸っていた所為で聞き取れなかった言葉を聞き返す。

「何でもないです」
責任とって下さいね。今度ははっきり聞こえた志摩くんの言葉の意味は掴めなかったが、不穏なものを感じて僕は何とも返事できなかった。
 

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プロフィール
HN:
kao
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非公開
職業:
秘書ときどき旅人
自己紹介:
PH・青祓・幽白・炎ミラ・その他ジャンルいろいろ。
長年燻っている想いからその時々の、萌えの欠片を集めました。
更新は自由気まま。リンクは同人サイトに限りフリーです。貼るも剥がすもご自由に★
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